【活動報告】8月31日(月)及び9月4日(金)、枚方市立田口山小学校にて、3年生に400字スキット創作の授業(2回目)を行いました。

1学期に初めて400スキット創作に取り組んだ子どもたち。自分の自由な発想をそのまま登場人物2人の会話にして表現するという体験です。今回が子どもたちにとって2回目の取組となります。
他者の作品に触れることで広がるイメージ
1コマ目。元気な挨拶からはじまりました。明るい表情にはとても楽しみにしていることがうかがえます。
1学期の取組を思い出してもらう意味で、初めて聴く作品を3作紹介しました。小学生から大人まで、これまで様々な人たちにつくってもらった作品は、どれをとっても同じものはありません。作品に触れるだけでさまざまにイメージが広がります。執筆のルールを復習したのち、執筆を開始しました。

「書く」過程からうかがえること
今回の報告は、創作の途中で子どもたちといろいろやり取りする様子を解説したいと思います。
作品については、登場人物が2人で台詞だけで綴るという制限の他に、原稿用紙1枚の最後の行で完結させるというルールがあります。台詞だけで最後の行まで使って1つの場面を作るのです。時折、声が聞こえてきます。「先生これ以上出てこない!」とか、「わからない」などです。時間はたっぷりあるので、あきらめずに取り組むよう優しく促します。

以前も書きましたが、基本的には本人が主体的に書き出すことを尊重します。したがって積極的に関わることはしません。子どものほうから声を上げてきた際に、自分の力で創造できるよう必要最低限の個々人に合った支援を行います。大人が関わって整えるというような姿勢で関わることは避けます。
自身の殻を破る機会
一方で、「できた!」と、原稿用紙片手に満足げな表情の子も現れます。
今回も、「先生できました」と言って見せに来る児童がいました。原稿を見ると、行があと4行残っています。時間はまだ残り10分。もう少し考えてもらおうと思って私は言います。「この結末に行くまでに、二人でどんなやり取りがあるか、場所を想像して動きを想像してみよう」「すごくいい作品だから、もう一度読み直して自分の頭の中にある絵をひろげてみよう。最後までもう少し頑張って!」「どうしても無理なら最後まで書けなくてもいいけど、時間の最後まで努力してごらん」

ちょっとくじけそうな表情をしていましたが、作品には力を感じたので、その児童には、少しだけ負荷をかけました。その児童の作品は大変に優れたものでした。最初の二行で海辺から見える一面の星空が浮かんできます。まるで自然な表現に導かれるようにイメージが目の前に広がります。空が世界の果てまでつながっていることを思い浮かべるような台詞のやりとりが続いていました。私はがんばって! と心の中で念じました。
自力で書き始めることが「自信」に
執筆中の子どもたちの中には、出だしがなかなか思い浮かばない子もいます。でも、最初から声をかけることはしません。子どもの可能性を信じで待ちます。指導者の立場で一見すると、その行動は無関心で冷たいように感じられますが、自力で想像を膨らませて描きはじめることこそ、大きな自信の土台となります。
書きはじめて、いったん止まっているようすを見て、はじめて、「どんな作品にしようと思ってるの?」と尋ねます。すると、小さな声で楽しそうにいろいろ教えてくれます。「そうなんだ、ここから先が面白そうだね」と言って離れていきます。

この取組では、筆を止めている見た目の様子だけでは、本人が真剣にイメージを膨らませていることが分らないことがよくあります。
小さなきっかけで動き出す瞬間
1コマ目の残り10分ほどで、それでもなかなか書きはじめられていない児童に声を掛けます。「どんな感じ?」「全然浮かばない」といいます。「好きなものは何?」「サッカー」「じゃあ、サッカーといえば頭の中に浮かぶものはどんな絵?」「試合」「もしかしたらサッカー習ってるの?」児童はうなずきます。「試合の時、どんなことがおこるかな」
ほんの少しの沈黙の後「あっ」と言って書き始めました。
2回目の取組なので、できるだけ1コマ目で完成させるように促します。1コマ目の最後に次の時間の最初の10分間は執筆の時間を延長することを告げます。すると休み時間も一生懸命書く人が5~6人いました。
さて、2コマ目の授業がはじまって10分後、一斉に執筆を終了します。途中でも構いません。世界に一つしかない作品です。創作したことに価値があることを強調し、全員の作品を回収します。
その後、初見で朗読し、肯定的に価値づけします。児童の感想や意見も必ず引き出します。その後、「自分が作者だとみんなに知ってもらいたい人は手を挙げてください」と、任意で手を挙げてもらいます(挙げても挙げなくても自由です)匿名希望も尊重します。
全員の作品を肯定的に価値づけできる場

前回と違い、今回は、自分の作品を朗読したい人をあらかじめ募り、その児童には、担任の先生と二人で役を決めて発表してもらいました。
ペアで発表する児童には、黒板前まで出てきてもらいました。作品の雰囲気を大切にする姿が印象的で、例えばきょうだいが出てくる作品などでは、まるで本当のきょうだいが会話しているように聞こえました。担任の先生方、ありがとうございました。
2コマ目が終わるまで、学級によって差がありますが6人~10人の児童の作品が発表できました。
作品が持つ力に、引き込まれる子どもたち
3コマ目の授業は、それぞれ4日後の1・2時間目でした。この日までに、私が作品すべてに赤ペンで肯定的なコメントを付けました。
45分のすべてを使って全員の作品を紹介・ファシリテートすることを目標に取り組みました。
途中までの作品については、書いたところまで読み、「このあとどうなるでしょうか?」と尋ねます。すると作者以外の子どもたちは自分のイメージを話してくれます。その話をもとに、私もそれに応えてイメージを肯定的に膨らませます。一つ一つの作品を子どもたちの感想や意見を引き出しつつ、自身も反応しながら、作品をどんどん紹介していきます。

先に紹介した残り4行に悩んでいた児童の作品が出てきました。例の、海岸から見上げた夜空が描かれていた作品です。見ると結局書けなかったことがわかりました。作者の自己肯定感を支えようと思うのと、その作品の雰囲気に影響され、ゆっくり朗読しました。登場人物の一人が眠くなっていきます。最後はおやすみの言葉で締めくくられるのですが、終わった後、一人子どもが「僕も眠たくなった」とつぶやきました。まぶたをこすって眠そうです。作品に入り込む集中力はこの作品の持つ力だと感じました。この作品の優れた部分を言葉にし、共有したあと、「自分が作者だと知ってほしい人は手を挙げてください」と声掛けすると自信を持って手を挙げてくれました。その姿を見てホッとしました。
この授業が育むもの ―― 子どもと教師の双方にとっての価値
このように、演劇創作活動の授業は、指導者が自身の肯定的価値づけの力を磨くことをリアルに求められるものになります。私は、担任の先生に、自らこの授業を実践していただき、ご自身の児童理解力向上に役立てていただきたいと願っています。

また、この授業は、子どもたちにも、自身の受け止め方と他者の受け止め方の違いを多様に感じることのできる機会をたくさん作ります。また、教師の姿を通じて、肯定的な価値づけには他者意識に立つ姿勢が土台にあるのだということを実感することができるのです。
しかもそれらが心理的安全性のある中で、楽しくできるところに、「行きたくなる学校」の場を増やす有用性があるのです。
投稿者プロフィール

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一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。
枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。
趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。
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