【活動報告】今年も田口山小学校にて各学期に一度の3年生への演劇創作活動の授業が始まりました。(2026年6月19日〔金〕、22日〔月〕)

 枚方市立田口山小学校では、今年も第3学年において演劇創作活動を各学期に一度計画をしています。その第1回目の取組が2026年6月19日(金)及び20日(月)に実施されました。

 2日間で各学級3コマを使い、400字スキット創作と発表の授業を行いました。

 授業の流れについては、過去の報告に詳細がありますので、初見の方はこちらの記事をご確認ください。

 今回の報告では、発達段階に合った演劇創作活動の意義についてまとめてみました。

子どもの発達段階ごとの特徴

 子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題について、文科省の有識者会議等では次のようにまとめられています。
 「道徳教育  子どもの徳育の充実に向けた在り方について(報告)(平成21年9月11日)」より(一部引用)
 
(2)学童期
(小学校低学年)
○ 小学校低学年の時期の子どもは、幼児期の特徴を残しながらも、「大人が『いけない』と言うことは、してはならない」といったように、大人の言うことを守る中で、善悪についての理解と判断ができるようになる。また、言語能力や認識力も高まり、自然等への関心が増える時期である。(以下略)

(小学校高学年)
○ 9歳以降の小学校高学年の時期には、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。(中略)自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」)。身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、自尊感情の低下などにより劣等感を持ちやすくなる時期でもある。(中略)この時期は、ギャングエイジとも言われ、閉鎖的な子どもの仲間集団が発生し、付和雷同的な行動が見られる場合もある。(以下略、引用終わり)

 簡単にまとめると、

・小学校低学年……大人の言葉を手がかりに善悪の判断ができるようになり、言語能力や認識力が伸びる時期。

・小学校高学年……9歳頃から「自分を客観的に見る力」が育ちますが、同時に個人差が大きくなり、自己肯定感が揺れやすい時期。仲間集団の影響を受けやすく、すれ違いやトラブルも増えやすい時期。

となります。

小学校高学年における重視すべき課題について

 ここから再び引用になりますが、特に小学校高学年における重視すべき課題について大切な視点が記載されていますのでそのまま記載します。

  以下引用です(出典は同上)。 

 これらを踏まえて、小学校高学年の時期における子どもの発達において、重視すべき課題としては、以下があげられる。

・抽象的な思考の次元への適応や他者の視点に対する理解

・自己肯定感の育成

・自他の尊重の意識や他者への思いやりなどの涵養

・集団における役割の自覚や主体的な責任意識の育成

・体験活動の実施など実社会への興味・関心を持つきっかけづくり     

(引用は以上:出典は先に同じ)

 特に小学校高学年の発達段階において、当時(平成21年!)から、自己肯定感や他者意識の涵養が課題として焦点化されていたことがわかります。

日常生活の多様な体験の中で育まれる人間関係を築く力 ―― 自力で磨くコミュニケーション力

 ここで、私たちが注目していることがあります。それは、子ども同士の人間関係が、日常生活のなかで起きる「すれちがい」の理解を重ねる中で自律的に育まれていることです。つまり、「自然発生的に起こるトラブルなど」の解決を通じて、主体的にその深化が図られているのです。そんな中で子どもたちは自分の力でコミュニケーションのあり方を身につけていきます。

 発達段階に合った「徳育」の充実を図る目的で、「特別の教科 道徳」が成立したのですが、その「徳育」を支える他者意識の涵養のための取り組みは、道徳の授業に加え、もっとアクティブな角度で、発達支持的生徒指導として実施すべきだと私たちは考えています。

小学3年生で初めて取り組む400字スキット(演劇創作活動)の意義

 効果的な発達支持的生徒指導を可能にするのが演劇創作活動です。特に、お互いの受け止め方の違いが当たり前のように存在することが意図的に体験できます。しかもそれは、心理的安全性のある中で体験できる特徴を持っています。
 先述した、「自然発生的に起こるトラブル」は、「発達の個人差」が「顕著」である関係性を背景に起こります。簡単に言えば人間関係のすれ違いがそれです。

 このトラブルの頻度の量が「自尊感情の低下」に大きくつながっているのではないかと考えています。さまざまな「トラブル=失敗」が心理的安全性の「ない」中での経験として蓄積される場合がそれです。

 そのようなマイナスの蓄積に対抗すべく、意図的な心理的安全性のある中での「失敗の肯定的理解の体験」、つまり多様性の肯定的理解の機会を蓄積していくことが重要です。

 この時期における効果的な演劇創作活動は、「心理的安全性のある多様な他者理解」の肯定的体験が容易にできる機会を提供することができるものとなっているのです。
 私は、この取り組みが、全国すべての小中学校で実践されることを願っています。

演劇は、なんとなく効果がありそうに直感的には感じるけど、どんなところがそういえるの? 

 このような疑問への回答は次の通りです。

①心理的安全性のある活動となっていること。

 演劇創作活動は、あくまでフィクションであり事実を扱うものではありません。したがって、正直に話すとか、噓をついてはいけないなどといった心理的な制限はありません。自由な発想が尊重される取組となっています。またそれは台本という対話的な表現が徹底された表現法を伴います。おのずと作者の対話的経験がベースとなっていることが多いといえます。つまり「心理的安全性のある自己開示」が自然に行われやすい活動なのです。

②他者意識を育む活動となっていること。

 演劇創作活動は、オリジナルの作品を主体的につくる活動です。当然のことながら、世界に一つしかない作者自身の作品が児童生徒の数だけ生まれます。つまりこれは、「他人と自分の考え方や受け止め方が違うことが実感できる」活動なのです。違っていることに価値があるということが体感できるのです。さらに演劇は、作品の内容が他者に伝わるものとなるかどうかを検討し、創作されます。「観客(受け手)の立場になって考えることが必ず求められる」のです。

③自己肯定感が育まれる活動であること。

 前述のように、心理的安全性のある中で安心して失敗できる環境が、自然につくられます。自由な発想が尊重され、作品が生み出されるのです。またその作品は、ファシリテートする指導者によって肯定的に価値づけられます。この「肯定的な価値づけ」が作者の自己肯定感を高めていきます。ファシリテーターのリフレーミングの姿勢は、鑑賞する側の児童生徒の姿勢にも影響します。大人の姿を感じて「肯定的価値づけの良さの実感」を積み重ねていくことができるのです。

 ※なお、ここに記載した効果は、たった1回の取り組みでは達成できません。発達段階にあった定期的継続的な取り組みが重要です。

3年生の子どもたちの豊かな創造性に感動

この授業の1時間目には、例示と書き方の説明の後、例によってぼーっと考える時間を体験しました。その後、鉛筆を一生懸命に動かし静かに創作する素敵な瞬間が共有できました。
 完成した作品の朗読では、毎回、新たな視点を感じさせられます。

一部の作品を紹介します。

 実際に演じてみたらとっても面白いものになりそうです。

 時間が足りなくて、未完成の作品でも大丈夫です。作者が、自分の中から全く新しいものを生み出したことに価値があるからです。

 これを指導者が朗読し、発表する際には、「ではここからどんな風なお話になっていくだろうかみんなで考えてみよう」と声をかけ、意見を出し合い、可能性を味わうのです。

次回は2学期の初めに行います。創作する子どもたちの輝く瞳に再び会えるのが楽しみです。

 齋藤 博 校長先生をはじめ、第3学年の担任の先生方、支援学級担任の先生方、大変にありがとうございました。

 2学期もどうぞよろしくお願いいたします。

投稿者プロフィール

武田正道
武田正道
一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。

枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。

趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。