演劇創作がつくる“心の遊び”と折れない自信

劇づくり

大丈夫、ここは心の深呼吸ができる場所。

「一度の失敗で、もう人生が終わったかのように落ち込んでしまう」、「周りの目が気になって、自分らしく振る舞えない」

 今、そんな窮屈さを感じているお子さんが増えているかもしれません。現代社会はルールが細かく整備され、便利になった一方で、人間関係の「遊び(ゆとり)」が少なくなっているように感じます。

 そんな時代だからこそ、学校教育に取り入れたいのが「演劇創作活動」です。なぜ演劇が、子どもたちの生きる力(非認知能力)を育てるのか。その理由を紐解いていきます。

現代社会が抱える「窮屈さ」と、子どもたちの不安

 昔の日本映画を見ると、今の社会よりも不便で、ルールも不完全だったことに気づかされます。しかし、その「隙間」があったからこそ、人々は思いやりや道徳心でつながり、お互いを補い合っていました。

 現代はあらゆる場面でルール化が進み、考えなくても正解にたどり着けるようになっています。ところが、その「正解」から少しでも外れること(=失敗と感じてしまう)が、子どもたちにとって耐えがたい恐怖になってしまいました。

 今、子どもたちに必要なのは、「心理的な安全が守られたなかで、たっぷり失敗し、そこから学ぶ経験」なのです。

演劇は、安心して「自分らしくいられる」リアルな冒険の場

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 演劇というと「セリフを暗記して発表する」イメージがあるかもしれません。しかし、私が提案するのは、ゼロから表現を生み出す創作活動です。しかもこれは、短時間で創作から発表まで行うコンパクトなものです。

 演劇の時間は、教科書の内容を覚えるような時間とは違います。

• 他者を意識すること

• 自分の表現を認めてもらうこと

 この2つを軸に、正解のない問いに向き合います。ふだんの生活では冷たい目が気になって自分を出せない子も、演劇という「リアルな、けれど守られた場」であれば、自分を解放することができるのです。

先生の役割は、知識を教えることではなく「ありのままの価値を見つける」こと

 演劇創作活動において、先生は「演出家」や「審査員」ではありません。子どもたちの行動のなかにある「良さ」を見つけ出し、光を当てる伴走者です。

1)リフレーミング(言い換え):

 一見、失敗に見える表現も「それは面白い視点だね」「今の動きで場の空気が変わったね」と、ポジティブな意味付けをしていきます。

2)タイミングの良い称賛:

 子どもが力を発揮した瞬間にその具体的な姿をさして「今の最高だったよ!」と声をかけ、その理由も伝える。この積み重ねが、子どもたちの自己肯定感を劇的に高めます。

「一度きり」ではなく「継続」することで育つ力

この活動で最も大切なのは定期的に「継続」することです。

 1回だけの体験イベントでは「楽しかった」で終わってしまいます。定期的に繰り返すことで、子どもたちは少しずつ他者との距離感を学び、自分への信頼を深めていきます。

 こうした「演劇的な手法」を教育課程に位置付けて継続している学校では、明らかな変化が見られます。

1)子どもたちが生き生きとし、他者を思いやる姿が増える。

2)いじめ事案が減少する。

3)トラブルが起きても、それを成長の糧にする力(レジリエンス)が身につく。

4)子どもたちと先生の信頼関係が向上する。

危機に強い、しなやかな心を

 演劇は、人生という本番を生き抜くための「最高のシミュレーション」です。

失敗しても大丈夫。他者と違っても大丈夫。そう思える経験が、予測不能な未来を生きる子どもたちの「折れない心」をつくります。

 全国の学校で、この「演劇創作活動」が当たり前になる未来を目指して。

 子どもたちがもっと自由に、もっと自分らしく笑える学校を、一緒に作っていきませんか。

演劇創作活動についてもっと知りたい方は、こちらをクリック

4人で原稿用紙を見ながら推敲

投稿者プロフィール

武田正道
武田正道
一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。

枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。

趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。