【活動報告】高校の「演劇創作探究」で育む、対話と協働の非認知スキル

総合的な探究の時間「演劇創作探究」講座

 一般社団法人ここで は、今年度、ヴェリタス城星学園高等学校にて、総合的な探究の時間「演劇創作探究」講座を担当しています。本講座は毎週1回、6・7時限目、前期12時間にわたるプログラムです。

 4月のスタート以来、400字スキット(短い劇)の創作を皮切りに、演劇的アプローチを取り入れた創作活動を積み重ねてきました。

 第7回目を迎えた今回のテーマは、前回行った「リレー創作」のブラッシュアップです。

7分間で紡ぐ、言葉のバトン「リレー創作」とは? 

 前回は4〜5人ずつのグループに分かれ、全員で机を丸く囲んで原稿用紙に向き合いました。ルールはシンプルですが、非常にダイナミックです。

1)全員が一斉に「台詞だけ」の台本を書き始める。(登場人物はグループの人数分) 

2)書き始めてから7分後、自分の原稿を隣の人へ回す。

3)隣から回ってきた原稿を受け取り、続きを書き進める。

 この「7分間の執筆×3回」のローテーションにより、全員がリレー形式でつないだ人数分の作品が誕生します。最終的に、完成した物語は最初の一歩(出だし)を書いた本人の手元へと戻ってきます。

1つの作品を選ぶプロセスに潜む「学び」

 今回の授業では、こうして生まれた複数の作品の中から、実際に発表で使う台本をグループで1つに絞り込み、内容を磨き上げる討議を行いました。

 実は、この「1つに選ぶ」段階にこそ、生徒たちの重要な学びが隠されています。

 ここで求められるのは、単に多数決で決めることではなく、深い「他者意識」です。自分の意見をわかりやすく伝え、相手の想いを受け止め、お互いの納得点を見つけて調整していく ―― これこそが、社会に出てから強く求められる総合的な非認知スキル(生きる力)です。

葛藤を乗り越え、「納得感」を共創する

 力を合わせて創り上げた作品には、どれも独自の魅力があり、甲乙つけがたいものばかりです。その中から相談して1つに決めるという、一見難しく思える「意見の折り合い(合意形成)」に生徒たちは真摯に向き合いました。

 自分の主張を押し通すだけではディスカッションは成立しません。逆に、遠慮してばかりでは本当の納得感は得られません。「なぜこの作品にするのか」を全員が腹落ちさせるためには、お互いの対話が不可欠です。

 時には「自分のこだわりを少し譲ることで、グループ全体の作品がより良くなる」という経験も生まれます。これは、自己犠牲ではなく、チームに貢献できたという健やかな自己肯定感へとつながっていきます。「リレー創作」には、多様な非認知能力を引き出し、輝かせる仕掛けがあるのです。

 グループで机を突き合わせ、悩みながら物語を創り出すこの豊かな時間が、総合的な探究の時間で身に付けるべき資質や能力を、心地よく、かつ力強く刺激しています。

投稿者プロフィール

武田正道
武田正道
一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。

枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。

趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。