枚方市立田口山小学校で2学期の演劇創作活動を実施(令和7年9月1日)
各学期に一度の寸劇創作カリキュラム(全3回中の2回目)

9月1日(月)枚方市立田口山小学校3年生を対象に今年度2回目の演劇創作活動をおこないました。
場面を演じる活動のため、机といすを教室の後ろに寄せ、活動スペースをつくった音楽室を用意していただきました。
1学期は一人ひとりが400字スキットを創作し、講師が朗読し交流しましたが、今回は身体表現に重点を置いたグループでの創作です。
1コマ目に5~6人で構成されたグループごとに「何をやっているのでしょう? あてっこゲーム」を行い、2・3コマ目には3~4人のグループごとに、台詞が「ただいま」「おかえり」だけの「ひと場面」を創り、発表し合いました。
何をやっているのでしょう? あてっこ
最初に舞台と観客席の区切りをみんなでカラーテープを床に張ってつくりました。
コミュニケーションには、伝える側と受け取る側があり、「舞台では演技が行われますが、観客席では、演じる人の様子を、目と耳をしっかり開いて、心を傾けて、「お客さんを」演じてください」と話し、コミュニケーションは伝える側と受けとめる側の双方の努力のうえに成り立っていることを確認します。
たった一本のカラーテープ(養生テープ)ですが、舞台と観客席の立て分けをすることで、演者と観客の双方の立場を学ぶことを体感します。他者意識を持つ大切さに気付かせることがねらいです。
この後、先生方と3人で例示をします。はじめに舞台上で横一列に3人並んで「はじめます」と言い、演じた後、また並んで「おわります」といいます。
はじめと終わりには観客が拍手をします。伝える努力へ敬意を示すためです。
写真はその例示のようすです。何をやっているのでしょうか(例示ではできるだけストーリー性を持たせる工夫をしました)。

心理的安全性のある形で、見えたままを言葉にすることは自己開示の入口
演技の後、「何をやっているのでしょう。見えたままを言葉にしてください」と聞きます。
一斉にたくさんの手が挙がりました。

この段階で、子どもたちは、台詞を使わずにジェスチャーだけで何をしているところかを伝え、見ている人が当てっこするゲームであることを確認します。
やり方が分かったところで、各グループから代表の児童に出てきてもらい、それぞれに紙に書いた「お題」を渡します(お題はグループごとに違います)。
各グループでそれを持ち帰り、制限時間10分で役を決めて練習し、そのお題に沿った場面をグループ全員で演じます。
練習時間の中で、短時間で折り合いをつけることも体験します。
それぞれの発表がどう見えたかについては、お題のとおりに見えたものでも、一部の人にとってはまったく別のものにも見えたという意見もあり、人によって受け止め方が違うこともあるのだということを共有できました。

人と自分の受け止め方が違っていてもよいことを共有・体感する場になります。
演劇創作活動はこのように、楽しく「違いを共有」できる機会をつくるものです。
心理的安全性のある、他者理解力を磨く場にもなっているのです。
自分たちで創作する台詞が2つだけの劇「ただいま」「おかえり」
続いて2・3コマ目は、「ただいま」「おかえり」の演劇創作の時間です。3~4人ごとに自由につくります。
2つほど例示をしたあと、それぞれどのように見えたのかを交流しやり方を確認。その後創作を開始しました。

相談している様子を観察していると、意見がぶつかり合っているところや、何をするのか迷っているところなど、まったく何もないところから創造することの「難しさ」をワクワクしながら取り組んでいます。
今週の金曜日(9月5日)にもうひと学級で実施するので今回の内容は掲載しませんが、それぞれ非常に工夫された内容でした。
伝えようとする内容を上手くまとめきれず、うまくいかなかったと思っていたグループの発表も、観客からは別の視点で一つの場面として理解できたという意見が出るなど、ここでも多様な見方が共有できたことに、うれしくなりました。
心理的安全性のある関係性を醸成する演劇創作活動
おわりに、「日常生活でも自分と他人の受け止め方の違いがあることは数多くあると思います。これからも、自分の言葉が伝わっていないなとか、あれ? と相手の反応にちがいを感じたときには、ひとたび立ち止まって、もしかしたら別の受け止め方をしているのかもしれないと思って相手の立場になって深く考えてみるように努力してみましょう。そうすると、お互いをよりよく知り合えるようになると思います」という話をしました。他者意識をもつことの価値を少しでも実感してもらえたならと思います。
振り返りのアンケートでも、「うまくいかなかったけど、たのしかった」というコメントもあり、取組自体は肯定的に受け止めてくれていました。
何よりも、「またやりたい」「つぎはもっとがんばりたい」など、前向きな回答が多く、実施して大変によかったと思えました。
9月5日もよろしくお願いします。
投稿者プロフィール

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一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。
枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。
趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。