枚方市立田口山小学校にて400字スキットの出前授業を行いました!

6月4日水曜日午前9時、枚方市立田口山小学校に到着。正門を通る際、穏やかな日差しの下、列になって街探検に出発する2年生にすれ違いました。現役の頃の感覚が蘇ってくるようでした。

今年度初めての3年生への400字スキットの授業が始まります。

進んであいさつのできる素敵な子どもたちが待っていました。

齋藤博校長先生とともに、2時間目のチャイムの鳴る直前に教室へ入ると、幾人かの子どもたちが集まってきて、「今日は2時間目から4時間目までよろしくお願いします」と丁寧に挨拶に来てくれました。「こちらこそよろしくお願いいたします」と思わずこちらも深く頭を下げました。

「よし、この子たちのためにがんばろう」という気持ちを湧かせてくれる真摯な心を感じました。

やっぱり挨拶って先手必勝なんだなぁと思いつつ、授業を始めました。

原稿用紙1枚で綴る世界に1つだけのオリジナルストーリーを一人一人が創ります。

はじめに、物語について尋ねました。子どもたちは自分が知っている昔話のタイトルをいろいろ挙げてくれました。これまでの国語の時間で学習した物語の題名も挙がりました。

次に「物語って何かな?」と漠然と聞いてみました。すると、いくつかの場面で成り立っていることや、登場人物の気持ちが変わることなど、その特徴について子どもたちが知っていることを教えてくれます。

「今日は、みなさんにそのようなお話を作ってもらおうと思っています」と言うと、「えー!? かけるかなぁ」との声も。「大丈夫。書けるよ」。長い文章のお話ではなく、原稿用紙1枚だけで創る短いお話であることを伝え、いくつかの作品例を紹介し、それぞれ「どんな絵が浮かんだかなぁ」というやりとりをします。自由な発想でのびのび描かれていることを知ると、安心したように、「何か書けるかも」という気持ちに次第に傾いていきます。それでも一部には「もう無理」と言う声も残っていますが、それを説得するのではなく、そのまま「不安な気持ちはわかるよ」と受け止めるだけにして、執筆の方法の説明に入ります。子どもたちの可能性を信じて進めていきます。

限られた条件だからこそ生まれる工夫

原稿用紙1枚に登場人物2人で、セリフだけで表現するという制限された条件の中で作られていることを伝えます。この限られた条件の中だからこそ、その困難に対する自分なりの工夫が生まれてくるわけです(もちろん自由と言っても、ほかの人を傷つけたり、いやな思いをさせてしまうような内容の作品はやめましょうと確認をしておきます)。

書き始めは授業開始20分後になりました。

すぐに鉛筆を動かし始めたのは、大体5〜6人位でした。鉛筆を握ったままじっと原稿用紙を見つめる人や、書き始めた人のようすをキョロキョロ見たり隣の人に声をかけたりと落ち着かない人もいます。

「すぐにかけ始められなくても大丈夫だよ、天井にあるキズを見たり、外の景色をぼーっと眺めたりしていると突然、書くことが『降りてくる』よ」と伝え、「自分の中にあるものを引き出すために集中しているのだから、お互いの集中のためには話しかけたりするのはやめようね」と、集中を乱すおしゃべりはやめるように促します。

信じて待つことであらわれる主体的な美しさ

この後、書き始めるまで、じっとして考える姿の美しさを感じることのできる瞬間がやってきます。この場に立ち会っている教師だけが味わえる贅沢な光景です。

この授業で、最初に子どもたちの心の美しさを感じられる瞬間です。

まだこの段階で、まだ原稿用紙に1行もかけてない子供たちを見ると、一瞬不安がよぎりますが、じっとどこか一点を見つめながら、思いを巡らす姿には、目に見えない自分の内面への旅の姿勢があると感じています。したがってしばらくは子どもたちのようすをしっかり見守り続けるだけで、声をかけない時間を大切にします。子どもたちの可能性を信じるという一点で教師の側の不安を支えるのです。

授業の後、教頭先生が、この書き始めるまでのようすを振り返って「待つことが大切なんですね」と話してくれました。この授業で最も大切なことに触れてくださったのでとても嬉しく感じました。その感性に子どもたちへの愛情を感じました。

さて、書き始めたら、長々と記してしまいました。

ここで、ひとたび御礼を申し上げます。素晴らしい子どもたちの姿に、日ごろの担任の先生との麗しい関わりを感じました。本当にありがとうございました。

続きは改めて掲載します。

投稿者プロフィール

武田正道
武田正道
一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。

枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。

趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。