小学3年生への演劇創作ワークショップをおこないました:寝屋川市立点野小学校(令和7年12月17日(水)と18日(木))

令和7年12月17日(水)と18日(木)のそれぞれ5限目に、寝屋川市立点野小学校で、3年生に演劇創作ワークショップ「ジェスチャーあてっこゲーム」をおこないました。

大目標は「自己肯定感を高め、他者意識を育む」こと

 演劇創作活動の「大きな目標」は、「自己肯定感を高め、他者意識を育む」ことです。
その大目的に向かった今回の「ねらい」は、"人はそれぞれ受け止め方が違うことが普通にあること"を知ることと、"関わり合うことのよさ"を体感することです。

初めてのグループでの劇の創作

「今日はグループごとに協力し合って"劇"を作って楽しみます」この言葉を聞くと、
「ええっ!」「できるの?」などの声が上がります。「だいじょうぶです」とだけ伝えます。説明を始めるときちんとお話を聞く姿勢ができています。
 自分たちの力で聞く姿勢をつくることができる集団であることに、話しながら、「素敵な子どもたちだな」と感じました。
 グループごとに渡されたお題が示す場面をジェスチャーで表現する活動だと知ると、見通しがついて少し安心したようすになりました。

みんなで教室に「劇場」を作ります。

「今からみんなの力を借りて、教室に劇場をつくります」と子どもたちに話すと、また一斉に「ええっ!」「どうするの?」などの声が。
「演劇が行われる劇場にはどんなものがありますか?」
「舞台」、「座席」、「灯り」などの声が上がります。
「じゃあ、舞台と観客席を作りましょう」「このテープを使います」

舞台と観客席を作ります。

 演者と観客が協働して演劇は成立します。それぞれがその役割を果たして両者のコミュニケーションが成り立つことを体感する場であることを確認。"演じる人"と"観客"の立場の違いと共通点を確認するために、教室に舞台と観客席をつくります。用意した養生テープをつかって、みんなで客席と舞台の境目となる線を一本引くのです。子どもたち自身が自分で整えることが自覚を促します。

舞台と観客席の境目の線

 どこからどこにテープを張ればよいのかがわかるように、3か所、印となるテープを張りました。それに合わせて、どの学級の子どもたちも、積極的に手伝ってくれました。あっという間にきれいな一本の境目の線が完成しました。

舞台と観客席の境目の線について

 この線の出来具合で、その集団のもつ"他者意識を発揮する力"がよく分かります。ピシッとずれがなく引ける学級は、後のこともしっかり考えているし、みんなで使う空間であるという他者意識が高いと分析できます。それをはかるために、細かい指示などはしません。指示すると自分たちの気づきではなくなるからです。ほめる価値も下がります。「自分たちで気づいてきれいに引いたこと」をほめられるのと、「指示通りに引けたこと」をほめられるのとではかなり自己肯定感の高まりに差が生まれます。

自分たちで気づき、創作するから高まる自己肯定感と他者意識

はじめに、先生方の演技を見てもらいました。
何に見えますか?

 この後のジェスチャーでの場面づくりでも、大人はできる限り介入しないようにします。特に大人はうまく完成させたいという感情が働きますが、失敗してもそれは失敗にはならないのが創作のよさです。受け止め方次第で俄然その作品の良さが浮き上がってくるものが多いのです。ここが、伴走とファシリテートをする教師の腕の見せ所です。

 どの学級もお題をもらったあとの打ち合わせ・練習を5~7分ぐらいで完成させてくれました。全員が生き生きと協力し合っている姿は気持ちの良いものでした。すごい、3年生! と心でつぶやいていました。

他者へ伝わることと伝わりにくいことを体感 ―― 自分の成長へとつなげる姿勢がすばらしい

 ふりかえりの感想をいくつか紹介します。
「考えるのがむずかしったけど、みんなでやると楽しくできた」、「この進化版をやりたい」

「最初は何をしているかわからなかったけど後になってくると分かってきた」、「ことばをつかわなくても伝わることが分かった」、「言葉を伝えないと難しい」、「前に出るのが緊張するかもと思ったたけれど、やってみると楽しかった」

「協力することは楽しいことだと知りました」、「こんな遊びをしたことがなかったのでとっても楽しかったです」、「みんなの良いところが見つけられたし、みんなと話すのが楽しくなった」(一部)


 自分の気づきをしっかり書いてくれていました。全員のコメント内容を読んで、「ポジティブ行動支援」を校内全体で取り組んでいることが、実際の子どもたちの行動にに表れていることに感動しました。担任の先生方の姿勢の賜物です。私もこの子たちと「またこの活動をやりたい」と思っています。3年生のみなさん、ありがとうございました!

投稿者プロフィール

武田正道
武田正道
一般社団法人ここで 代表理事。
1965年生まれ。出版社勤務等を経て1992年より公立中学校社会科教諭。2006年夏に大阪府中学校演劇協会と出会い、創作劇活動の教育的効果に魅力を感じ研究を始める。

枚方市立西長尾小学校校長就任後は、「対話力」の向上に高い効果をもたらす「発達段階に合った創作劇活動カリキュラム」を構築し、2023年度から全学年で実施。心理的安全性のある教育環境づくりへ尽力。2025年3月退職後も教育支援活動を継続。

趣味は映画鑑賞、ピアノ練習、雑談、自作カレーづくり。